そんな「住民」などいない。V22は危ないと思わせるために捏造した談話だ。 

以下は本日発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
本論文も、彼が、戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。
有数の読書家である親友は、彼と私は呼応しているね、と電話をくれた。
私は、即座に同意した。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。

平壌を襲え
日本の周りには支那をはじめ露西亜北朝鮮と知性を疑われる国が居並ぶ。 
軽挙妄動する彼らを米軍は自衛隊と一緒に監視警戒に当たっている。 
そうした軍務を遂行中の米軍V22オスプレイ屋久島に緊急着陸中に墜落、乗員8人が死んだ。 
大変な事故だが、それを報じるNHKニュースには哀しかった。 
同型機が捜索に加わるのを見て「住民から不安の声が聞かれました」と。 
危なっかしい機だ。こっちに向かって落ちてこないだろうかという意味だ。 
朝日新聞普天間の「50歳女性」に「いつかこの辺に落ちるのではないかと怖い」と語らせている。 
そんな「住民」などいない。
V22は危ないと思わせるために捏造した談話だ。 
確かに沖縄の人は米軍が嫌いだ。
先の戦争で島民の三人に一人が殺された。
宜野湾ではイペリットが撒かれ、今でも生きた毒ガス弾が見つかっている。 
でも米軍将兵が殉職したら、可哀想にと思い、手も合わせる。
安倍首相の死に喝采した都立大の宮台真司のようには振る舞わない。
日本人だからだ。 
しかし朝日は住民の談話を創るだけでなく、事故機は「制御不能の状態で飛び回った」と、致命的欠陥機のように報じる。 
モリカケと同じ。
証拠もないのに勘繰りで疑惑を吹聴する。
それで安倍政権を倒した自信がある。 
米軍がすべての同型機の飛行を停止すると朝日はもうV22の弔鐘と受け止めてはしゃぎまくった。 
人民解放軍の日本侵攻はまず島嶼部から始まる。
それに対応し得るのは垂直離着陸ができ、積載量が大きく、高速で飛べるV22を措いて他にはない。
習近平はそれを排除したいと考える。 
朝日は彼の意に沿って記事を書いている。 
尤も朝日の言う「危なっかしい」イメージに根拠はある。
性能面であまりに欲張り過ぎていることだ。 
平たく言えばヘリの機動性と高速輸送機の能力を無理やり合体させている。 
そこまで欲張る理由は実は半世紀前のテヘラン米大使館占拠事件にある。 
ホメイニ師配下のイスラム狂信者どもが米大使館を襲い、館員ら52人を人質に取った。 
戦争になってもおかしくないが、その前に人質を救出せねばならない。 
カーターはヘリを主体とする救出作戦を承認したが、ヘリは足が短く鈍足だ。
人質を救出しても燃料切れで国外脱出もできない。 
それを補うため、
① イラン中部の砂漠に仮設中継基地を置き、ヘリに給油しテヘランに侵入
②別動隊がテヘラン近郊のイラン空軍基地を制圧し救出機を送り込む
③ヘリ部隊が大使館を急襲、人質を救出し空軍基地に飛んで国外に脱出する 
という複雑な計画だった。 
それが最初の中継基地で砂嵐に見舞われ、通行中の乗り合いバスに見つかり作戦は中止。
さらに撤収中にヘリが事故を起こし、兵員8人が死亡した。 
人質はその後1年経ってやっと解放され、米国は世界に恥を哂した。 
この恥を元に人質解放の年に「90度可変のティルトローターを持ち、垂直離着陸ができ、32人を乗せて3400㌔を時速565㌔で飛ぶ」オスプレイの開発が始まった。 
量産機の完成まで13年かかり、開発費は月面に人を送ったアポロ匪幽のそれを越えた。 
それは「高速で軽量、運動性能が高く、かつ20㍉機銃2門を搭載」という欲張った要求をされた零戦の開発に似る。 
零戦は試験飛行で操縦士二人の殉職という犠牲の上に3年で完成したが、米国版は実はまだ完成の域には達していない。 
今、V22の乗員は事故率の高さを知っている。
それでもテヘランの恥を雪ぐべく毎日をテストパイロットのつもりで飛んでいる。 
この人質救出機の完全版ができれば、めぐみさんの救出も夢ではなくなる。 
朝日もNHKも習近平の鼻息を窺うのではなく、日本人としてV22の意味を考えてみたらどうか。

 

2023/12/13 in Kyoto