「中国は一つの中国の正当性を主張するけれど、それには何の根拠もない」とトランプに教え、中国の脅威の深刻さを訴えた。

中国は「アベの死」を大歓迎
2022年12月17日
随分前に、世界中のプリマから大変な尊敬を受けているモナコ王立バレエ学校の老女性教授が来日した。
その時に彼女が芸術家の存在意義について語った言葉である。
『芸術家が大事な存在なのは、隠された、隠れた真実に光を当てて、それを表現する事が出来る唯一の存在だからです。』
彼女の言葉に異議を唱えるものはいないだろう。
高山正之は戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであるだけではなく、戦後の世界で唯一無二の芸術家と言っても全く過言ではない。
一方、大江、村上、平野等、作家と称する人間達、自分達を芸術家だと思いこんでいる人間達の多くは、芸術家の名にも値しない存在なのである。
何故なら、彼らは、隠された、隠れた真実に光を当てて、それを表現する、どころか、朝日新聞等が作り出した嘘を表現して来ただけの人間達だからである。
彼らの様な存在は、日本に限らず、世界中の国においても同様なはずである。
つまり、真の芸術家とは、極少数しか存在していないのである。
私が、今の世界で、最もノーベル文学賞に相応しいのは、高山正之を措いて他にはいない、と言及している事の正しさを、本著も、痛切に証明している。

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ゾロゾロ出てくる朝日新聞「虚報」の歴史
高山 
こう見ると朝日新聞は疑惑があれば動くように見えるが、それは時と場合による。
北朝鮮が日本人を拉致しているという話は一九八九年の大韓機爆破テロで捕まった金賢姫が拉致日本人の存在を語り、九〇年代の早い段階で濃厚な疑惑と状況証拠が出始めた。
めぐみちゃんの目撃が語られ、田口八重子さんのような動かぬ被害者も出てきた。
このとき外務省アジア局長の阿南惟茂との記者懇談会があって、朝日記者が「北の拉致と言っても疑惑だけでしょう」「証拠もないのに疑惑だけで(新聞に)書いていいのか」と言って北朝鮮に肩入れした。 
阿南局長も「確かにまだ、疑惑のレベルです」と答えた。
だから朝日はいい気になって、疑惑否定に走った。
一九九九年の社説で「拉致疑惑は日朝交渉の大きな障害になる」と堂々と発表している。
石平 
拉致問題では「疑惑だけで騒ぐのはおかしい」と主張しながら、今度は疑惑だけで、世間を煽り立てる。
まったく真逆ですね。
高山 
そういう環境を演出して、ことさらに安倍さんを倭小化し、社会の敵のように仕立て上げる。
そうして社会に不満を持つ今回の犯人のような人回を煽り立て、安倍さんを狙ってもおかしくないような環境を生み出してきた。
朝日というのは、本当に罪深い新聞だと痛感します。
石平 
あの意味のわからない暗殺の土壌をこれでもか、これでもかと作ってきたのは実はメディア、特に朝日新聞なんてすね。
高山 
それは間違いない。でも朝日だけじゃないですよ。
第二次安倍内閣発足の前夜、日本記者クラブ党首討論会があったんです。
幹事はマスコミ四社。朝日、毎日、東京新聞共同通信です。
以前は産経もメンバーだったのに外されて、結局、アンチ自民、アンチ安倍的な人が司会進行役をやるのが通例だった。
そのときはのちにTBSのニュースキャスターになった、当時朝日新聞星浩が、「安倍さん、日本を貶め、悩ます慰安婦問題、いわゆる性奴隷の問題をどう解決するつもりですか」と詰問調で質した。
そこでの安倍さんの切り返しが見事だった。 
「星さん、慰安婦問題は、あなたの朝日新聞が、吉田清治という詐欺師の本をまるで事実のように書いて広めたものじゃないですか。それが慰安婦問題ですよ」と。
朝日がでっち上げた虚偽報道だとズバリ指摘したんです。
石平 
その経緯を、朝日は報道したのですか。
高山 
書くわけもない。
石平 
そういう事実を書かないとしたら、それこそ報道機関の資格がないと言わざるを得ない。
高山 
まったくおかしな話ですよ。
そのあと、誰かに聞いた話ですが、安倍さんがトラップ大統領と会談したとき、彼がニューヨークタイムズを「フェイクニュースだ」とやっつけたという話になった。
すると安倍さんは「私もだいぶ前に朝日新聞をやっつけたんですよ」と、それで二人は大いに意気投合したと。 
安倍さんは、政権の殺生与奪の権を持つメディアに対して、嘘を流す新聞の責任をどうとるのか、名指しで問うた。
「こんな嘘八百を並べ立てる人たちに負けてはいけない」という強い決意が安倍さんにはあったんです。
石平 
全国中継された党首討論の場で名指しで批判し、新聞は必ずしも公正ではないということを世間に知らしめた効果は大きいですよね。
高山 
河野談話」というのがありますね。
韓国の元“従軍慰安婦”とされる人たちが一九九一年、日本政府に保障を求めて日本の裁判所に提訴したことをうけ、九三年、当時の宮沢内閣の河野洋平官房長官が〈謝罪と反省〉の談話を公表した一件です。 
産経新聞の阿比留瑠衣氏によれば、安倍さんは第二次政権を発足させるとすぐ河野談話が根拠とした「慰安婦の聞き取り」について、初めて検証作業をやった。
詳しくは産経新聞が報じていますが、証言した十六人のうち出身地も氏名すらもはっきりしない者もいた。
これはおかしい。
なぜならいわゆる“日帝”支配時に日本は朝鮮人すべての戸籍を作った。
それまでの朝鮮では女の子に名前もつけなかった。
女の子は初めて名前を付けてもらうのだけれどそういう先例がない。
それで日本の女の子の名前を手本に、「子」や「恵」が付く名前になった。
キムヨンジャ(金蓮子)とか朴槿惠とか。
それに朝鮮では出身地や親の姓が大事にされる。
ところが河野談話に出てくる証人はその名も出身もはっきりしない。
慰安婦ビジネスをやった場所もいい加減とくる。
検証では談話が出される前に韓国側と話のすり合わせまでやっていたこともばれた。
つまり、河野談話の背景となる調査はまったくのインチキで、そのフェイクを指導したのが社民党福島瑞穂だった。
それと朝日新聞がグルになってインチキを広めていた実態が浮かんできた。 
これは痛烈だった。
朝日新聞は「慰安婦問題とは朝日が吉田清治というペテン師の話に乗っかって作ったフェイクニュースだ」と指摘され、その上、河野談話まで韓国とすり合わせして作った信憑性ゼロの嘘っぱちと判明した。 
ここに至って朝日新聞も言い逃れができない事態に嵌(はま)ったことを知った。
そしてこの河野談話検証から三ヵ月目に「慰安婦話は嘘でした」と嘘を流し、日本人を口を極めて罵り続けたことを認め、三十年前までさかのぼって関連記事十六本を削除した。 
ふつうなら廃刊ものだ。
当たり前だが、購読数は音を立てて減っていった。
軒も傾き、いまでは百四十億円もの経常赤字も出している。
しかし、朝日は、己の不行跡を反省するどころか、逆に彼らを追い込んだ安倍さんへの怨念に燃え始める。 
何としてでも安倍を倒す。
その執念が後の「モリカケ」「桜を見る会」問題の追及という安倍さんと昭恵夫人に対する個人攻撃報道になる。
根拠もない嘘をまことしやかに疑惑と称する。
それを連日やられれば大きなストレスになる。
安倍さんの健康を痛めつける疑惑報道はとうとう第二次安倍内閣を潰してしまった。
朝日新聞の異常なところはその後も続く。
本気で安倍さんの葬式を出す気だった。
それがあんな形で現実になっても、朝日新闇はなお誹謗中傷を続ける。
死の尊厳さえ汚して嬉々としているのが怖い。
石平 
朝日としてみれば、安倍掃討作戦の仕上げがこんな形で終息してしまったので、今後、どう展開していったらいいか、わからなくなっちゃったのでは?
高山 
安倍さんが亡くなられた日の翌日の朝日新聞に小野甲太郎記者が評伝を書いています。
安倍さんの外交、内政での大きな足跡を語りながら、朝日新聞の記者としては珍しく自分たちが仕掛けた「モリカケ」への言及がなかった。
自分たちで捏造して退陣に追い込んだこの疑惑報道に一言も触れていないこと自体、明らかに異様です。
それは、朝日新聞の中にも、大阪社会部が主導した「モリカケ」疑惑報道に懐疑的な、まともな人物がいるということかもしれないが、そう見せかけるだけのフェイクとも受け取れる。
まともに読む新聞じゃないことは確かです。
 
中国は「アベの死」を大歓迎
高山 
ところで石さん、中国は本音としては安倍さんがいなくなって助かったと思ってるんでしょ。
ずっと安倍さんに封じ込められてきたし、QUAD(日米豪印戦略対話)という枠組みまで作られちゃって。
石平 
そりゃそうですよ。
第一次政権のときから、すでに安倍さんは自由と繁栄を守る行動枠組みとしてインド太平洋構想というものを持ち出していましたからね。
あの頃すでに、世界中の首脳に先んじて、今後、中国の覇権主義による膨張をどう封じ込めるか、アジア太平洋地域の平和をどう守るかという先見性を持っていた。
まだほとんどの首脳が深刻に意識していない時期にもかかわらず……。
高山 
残念ながら第一次政権は早めに終わってしまったけど、そのあとの民主党政権は最悪の時代でしたから、2012年に第2次政権が発足したときはホッとしましたよ。
石平 
翌年1月に国会の所信表明演説で「地球を俯瞰する外交」を打ち出し、積極的に首脳外交、まさに地球外交を展開していきましたね。
私自身が数えただけでも2013年からの4年問でおそらく60ヵ国以上の国々を訪問して、20数回の国際会議にも参加して、そこで「自由で開かれたインド太平洋構想」を世界中に広げる。
戦後日本で、これほどの国際政治の大舞台で活発な外交をした首相は、安倍さん以外に見当たらない。
高山 
その通りですよ。
あとで詳しく述べますが、中国、ロシアというランドパワーの国が外洋に出ようとするのを、海洋国家である日本が阻んできた。
その海洋国家日本が、いまやっと安倍さんの力で、70年の空白を乗り越えられそうになってきたのに、志半ばで凶弾に倒れてしまった。
ほんとうに残念でならない。

石平 
2016年にトランプ大統領の時代になってからも、安倍さんはすごい仕事をやった。
大統領選終了から10日も経たないうちに、世界の首脳に先駆けてニューヨークへ飛んでいき、トランプに会った。
トランプは外交はまったくの素人で、外交戦略も中国に対する認識もほとんどない。
そこで安倍さんがレクチャーして、「中国は一つの中国の正当性を主張するけれど、それには何の根拠もない」とトランプに教え、中国の脅威の深刻さを訴えた。
それでトランプは安倍さんからレクチャーを受けた世界観に基づいて、対中外交を展開していったのです。
中国の膨張をゆるさないという姿勢で、貿易面でも中国への制裁的関税を発動する。
そこから世界の流れは一気に変わっていった。

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