角栄は大東亜共栄圈の復活に乗り出した。それが米国務省を怒らせた。それで外人記者会を使い、「外電に弱い日本メディア」を巧みに利用し、みごと角栄を追放した。 

以下は本日発売された週刊新潮の掉尾を飾る高山正之の連載コラムからである。
本論文も彼が戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであることを証明している。

随分前に、世界中のプリマから大変な尊敬を受けているモナコ王立バレエ学校の老女性教授が来日した。
その時に彼女が芸術家の存在意義について語った言葉である。
『芸術家が大事な存在なのは、隠された、隠れた真実に光を当てて、それを表現する事が出来る唯一の存在だからです。』
彼女の言葉に異議を唱えるものはいないだろう。
高山正之は戦後の世界で唯一無二のジャーナリストであるだけではなく、戦後の世界で唯一無二の芸術家と言っても全く過言ではない。
一方、大江…彼については、故人を悪くは言いたくないが(下記の高山正之に倣って言えば)村上等、作家と称する人間達、自分達を芸術家だと思いこんでいる人間達の多くは、芸術家の名にも値しない存在なのである。
何故なら、彼らは、隠された、隠れた真実に光を当てて、それを表現する、どころか、朝日新聞等が作り出した嘘を表現して来ただけの人間達だからである。
彼らの様な存在は、日本に限らず、世界中の国においても同様なはずである。
つまり、真の芸術家とは、極少数しか存在していないのである。
私が、今の世界で、最もノーベル文学賞に相応しいのは、高山正之を措いて他にはいない、と言及している事の正しさを、本論文も見事に証明している。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。

外電は企む
先日の朝日新聞の紙面建てには驚かされた。 
一面トップから総合面に社会面、さらには天声人語まで「スターリン死去」並みの扱いで報じたのがジャニー喜多川だった。 
さすがにスターリンほどのネタもないのか。総合面では「少なくとも数百人に及ぶ少年たち」にジヤニーは「後ろから体や性器を撫で回し」「口腔性交」「射精」に「肛門性交を強要したり」とか酷い描写がひたすら並べられる。 
淫靡な犯行が表に出た理由を天声人語が明かす。 
今年3月のBBCのドキュメンタリー番組で「勇気を出した告発者が証言した」のが発端という。 
これをきっかけに新たな証言者が出てきて「1970年代前半から2010年代半ばまで」続いた「絶対権力者」(朝日の見出し)の犯罪が白日の下に曝されたと結ぶ。 
アカデミー賞俳優ケビン・スベイシーの男色醜聞など足許にも及ばない。 
まさに世紀の大醜聞だからスターリンと同じでいいのだと朝日は言いたいらしい。 
そうやって気張るのは勝手だが、その割に慰安婦報道と同じ、あまりに嘘が多すぎないか。 
例えば事件の発覚は「BBCの番組」という点。
それは明らかに嘘で、昭和の御代にすでにフォーリーブス北公次が「女を知る前に男を教えられた」と書いている。 
その10年後には週刊文春が連載でジヤニーによる多くの少年の被害を告発している。
朝日が紹介したえげつない濡れ場はすべてその連載にある。 
対してジャニーは名誉毀損で文春を訴えたが、敗訴し、上告も2004年に棄却されている。 
二昔前にジャニーの悪行はみなバレていたのだ。 
しかし裁判結果は新聞もテレビも無視した。 
テレビには変わらずジャニーズは出続け、テレビ局はジヤニーズ事務所に日参し、ジャニー自身も変わらずスターを目指す子供たちを自宅に泊めて毒牙にかけ続けた。 
つまりBBCが初出じゃない。どころかBBCの番組自体、20年前の裁判に関わった当時の取材記者や性被害を受けた少年、法廷でジャニーと対決した弁護士などのインタビューを通して「プレデター・ジャニー」を描いている。 
日本のメディアが20年間放置してきたネタを、外電が時を超えて報じた。 
そしたら日本メディアが大騒ぎを始めた。
自分でネタの評価ができない。
あるいは自主性がないのか。 
しかしその反省はない。
朝日などは社説で「ジャニーズ事務所はなぜ手癖の悪い老人を判決後も放置したのか」と叱る。 
朝日も同罪なのにその言い様はないだろう。 
この顛末に既視感を覚える。
あの角栄金脈事件だ。 
角栄が登場して日本が何となし元気になったときに文藝春秋誌が「田中金脈」を報じた。 
新聞もテレビもジヤニー判決同様に受け流したが、外人記者会が角栄を呼んで事情が変わった。
彼らは角栄を吊るし上げ、それを東京発の外電が報じた。
日本の新聞は一転して大騒ぎを始め、1ヵ月後には角栄を辞任させてしまう。 
外人記者会は米国務省出先機関というもう一つの顔がある。 
原爆投下を非難した鳩山一郎が首相に就く前、外人記者会が呼び出して「ナチのシンパ」と吊るし上げた。
それを報ずる外電を口実に鳩山は政界を追放された。 
マーク・ゲインは「GHQの将官の指示だった」と『ニッポン日記』に得意そうに書いている。 
角栄は大東亜共栄圈の復活に乗り出した。
それが米国務省を怒らせた。 
それで外人記者会を使い、「外電に弱い日本メディア」を巧みに利用し、みごと角栄を追放した。 
今回の外電発のジヤニー騒動にも裹があるのか。 
そう言えば騒動の先陣は国連人権理事会が切った。 
一方でエマニュエル大使は内政干渉で叩かれ、LGBT法は骨が抜かれた。 
朝日は語らないが、その辺がヒントなのだろう。