9条2項にはこう書かれている。「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」軍事力を持たずに、中国や北朝鮮からどうやって国民、国土を守るのか。

以下は、9/1に発売された月刊誌正論の巻頭に、岸田首相に告ぐ歴史的使命を全うせよ、と題して掲載されている櫻井よしこさんの論文からである。
今の首相が岸田だから、櫻井よしこさんとしては、戦後最大の危機にあるといっても過言ではない日本が、間髪を置かずなさなければならない事について、直言せざるを得ないのは重々理解できる。
だが、言っても無駄な相手に対する直言は、徒労にしかならないと感じるのは私だけではないだろう。
それでも、3段組みで、p26からp37に渡る彼女の論文でp36~p37の最終章は日本国民のみならず世界中の人たちが必読。
見出し以外の文中強調は私。
前文省略。
国民の命より古賀氏か 
岸田氏は決断の時に直面すると逡巡する。
それは「宏池会イズム」へのこだわりゆえか。
いまだに岸田派を資金面で支え、強い影響力を行使しているとされる古賀誠氏が八月十三日の西日本新聞で岸田氏への強烈な牽制球を投げていた。
主な論点は以下のとおりだ。 
① 日本の戦後政治は憲法九条と日米同盟に基づく。
二つの中心点があるという意味で大平正芳氏はこれを楕円の哲学とした。
岸田氏は二つの中心点のひとつ、日米安保に則ってのみ防衛力を整備している。 
② 血と汗と涙が込められた九条を次の世代に残すべきだ。 
③ ③宮澤喜一氏は憲法の尊重、歴史認識言論の自由、軍事大国にならないという四つの基本哲学を残した。
岸田氏はその安保政策において、四つの基本哲学に反してはならない。 

こんな先輩を持って、岸田氏は本当に気の毒だ。
① と②については憲法九条の異常さを説明するだけで十分だろう。
9条2項にはこう書かれている。
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」 
軍事力を持たずに、中国や北朝鮮からどうやって国民、国土を守るのか。
交戦権とは政府が国民や国土を守るために戦う権利のことだろう。
政府にその権利を認めないということは、いざ有事のとき、国民に死ねと言うに等しい。
こんな9条を次の世代にまで引き継げという古賀氏は、国も政府も国民を守らなくてよいと言っているに等しい。 

③は片腹痛い。
宮澤氏の四つの哲学がどれ程のものか。
たとえば歴史認識について宮澤氏は節操のない首相だった。
慰安婦問題について朝日新聞吉田清治という詐欺師のでたらめ話を報じ、後に、慰安婦だと名乗り出た金学順氏に関して朝日の記者、植村隆氏が女子挺身隊と慰安婦を結びっけ、事実と全く異なる報道をした。
日韓間にすさまじい軋轢が起きて、その渦中に宮澤氏は訪韓したのだが、そのとき、事実を確かめることもなく、宮澤氏は8回も謝った。 
その後の経過を見れば慰安婦=女子挺身隊は完全な間違い、日本政府や軍が女性たちを強制連行したという非難には全く根拠がなかったことが判明している。
宮澤氏の8回の謝罪、宮澤氏に仕えた加藤紘一河野洋平官房長官の言動がいかに日本の名誉を傷つけたかを思えば、宮澤氏以下、宏池会の重鎮の言動には許しがたいものがある。
そんな人物を引用して、岸田氏に彼らの哲学に従えと、押しつけがましく言う古賀氏の常識を疑うものだ。 
陋習となり果てた宏池会イデオロギーなど打ち捨てて岸田氏は自らの歴史的使命を達成するのがよい。
世界大激変の今は、岸田氏にとっても日本にとってもまたとないチャンスだ。
憲法改正で日本国をまともな国の形に少しでも近づけること。
気概ある、勇気ある、心優しい国造りを行いながら、どの国にも位負けしないリーダーを目指すことで、岸田氏は歴史の要請に応え、日本国の立て直しを実現できるだろう。