それほどの気合いが入っていたので、2022年の参院選はほとんどフルで全国を回っていました。

以下は、只今、発売中の月刊誌WiLLに、「政局を仕掛ける財務省は日本のディープステートだ」、と題して掲載されている、
田村秀男、阿比留瑠偉、石橋文登の3氏による対談特集からの抜粋である。
月刊誌WiLLが、21世紀に生きている人間として、真実・真相を知りたいと考えている人間の必読書である事は何度も言及している通り。
本章と、同様の月刊誌であるHanadaの特集記事の或る章を読んだ私は、安倍さん暗殺事件についてゾッとする一つの超越に至った。

前文省略
安倍さんを怒らせた財務官僚
石橋 
安倍さんが財務省に対して怒りを見せた最初のきっかけは「矢野論文」です。
当時、現職の財務事務次官だった矢野康治氏が『文藝春秋2021年11月号』で「財務次官、モノ申すー『このままでは国家財政は破綻する』」という論文を発表。
内容は積極財政を〈バラマキ〉と断じ、日本の財政状況を〈タイタニックが氷山に向かって突進しているようなものだ〉と批判したのです。
阿比留 
これが安倍さんに火をつけー。
石橋 
安倍さんは当然、財務省が矢野論文を通して「アベノミクスの時代は終わった」と宣言したと受け取りました。 
「石橋、考えてみろよ。トヨタ自動車の財務担当者が記者会見で『我が社は債務超過です』と言ったら、どうなる? トヨタ自動車の株は暴落するだろう。矢野はそれと同しことをやったんだよ。まっ、株価に影響がなかったことを考えると、市場が彼の主張をまったく評価していないことが証明されたわけだけどね」と言っていました。
そして、最後にポツリと、「矢野論文は、俺に対する財務省の宣戦布告かもしれないな」と付け加えた。
田村 
安倍さんは首相退陣後、財務省増税、緊縮財政に反対する積極財政派の先頭に立っていたわけだから、喧嘩を売られたと受け取るのは当然だろうね。
阿比留 
矢野論文が発表されたほぼ同時期(2021年10月)に岸田政権が発足しています。
単なる偶然と言えるのでしょうか。
石橋 
その直後の2021年12月、財務省が岸田首相や茂木敏充幹事長に働きかけ、自民党総裁直轄機関として「財政健全化推進本部」(本部長・額賀福志郎)を新設しました。 
これは自民党政務調査会にあった「財政再建推進本部」を高市早苗政調会長(当時)が「財政政策検討本部」に衣替えし、看板から「再建」のふた文字を消したことへの対抗です。 
これに安倍さんはカチンときた。
アベノミクスの継承をしないのであれば、岸田を許さん」となったのです
阿比留 
総裁直轄機関としたところに狡猾さが垣間見えます。
田村 
「財政健全化」という看板はもっともらしいのですが、要はPB(プライマリー・バランス)の均衡化の目標を達成するということです。
さらに財務省がからんでいたと考えられる安倍批判のひとつに、2022年3月、岸田内閣が国会に提出した日本銀行政策委員会審議委員の人事案もありました。
石橋 
あれにも安倍さんは激怒しました。
リフレ派(積極財政派)の論吝である片岡剛士氏が任期満了で退任する代わりに、アベノミクス批判ばかりしている岡三証券グローバル・リサーチ・センター理事長の高田創氏を押し込む人事案だったからです。
田村 
高田氏はアべノミクスや異次元緩和の逆サイドに立つ、財務省の代弁者のような人物です。
安倍さんが怒るのも無理はない。
石橋 
安倍さんは「岸田さんを信用した私かバカだったよ。岸田さんだって、私の内閣で汗をかいてきたんだから、もう少しわかっていると思っていた。やっぱり、宏池会はダメだな……」と言い、「これでもし(日銀総裁の)黒田東彦(はるひこ)さんの後継にクロダノミクスを捨てる人物を選ぶようなら、政局になるな」と怒気を込めていた。
それほどの気合いが入っていたので、2022年の参院選はほとんどフルで全国を回っていました。
田村 
総理・総裁でもないのにすごい気合いの入りようでした。
それで不幸な事件で命を落としてしまった…
阿比留 
安倍さんは表に出さずとも、それ以前から財務省批判をしていました。
2016年12月に出版した拙著『総理の誕生』(文藝春秋)にも、安倍さんが財務省についてボロクソ言っていることを書きました。
当時は、財務省と安倍さんの関係は注目されていなかったので、あまり世間の反応は集まりませんでしたが……。
石橋 
捩り返れば、2014年の「消費増税延期」を問うた衆院選あたりから安倍さんは財務省に対して強い不信感を抱くようになった。 
あのとき、消費増税の“先送り反対包囲網”を主導したのは、財務事務次官で、小沢一郎氏とも近い、香川俊介氏でした。
香川氏は、安倍さんの後見人であり、政界に強い影響力を持つ森喜朗元首相のところを訪ねたり、公明党のみならず、支持母体の創価学会にまで根回しをし、「とにかく消費税増税の延期はすべきではない」と工作に動き回っていました。 
私が安倍さんに「香川さんを好き勝手させていいんですか」と聞くと、「香川は俺に政局を仕掛けているのか」と吐き捨てるように言いました。
2014年暮れの消費増税延期の是非を問う衆院選は、財務省が解散の引き金を引かせたようなものです。
この衆院選自民党は大勝しているので勝敗は明らかですね(笑)。
田村 
財務省はまるで"日本のディープステート"です。
民主主義で選ばれた政権の意思決定を官僚が組織ぐるみで潰しにかかるのは異常。
国民が選んだ首相に対して、官僚が反旗を翻しているわけだから、安倍さんが怒るのも当然でしょう。
財務省の仕掛けている“政界工作”は民主主義の根幹にかかわる、もはや現在の選挙制度すら否定する″憲法違反゛です
石橋 
私は当時、産経新聞の政治部を離れていましたが、編集局長に言われ、大見出しに「財務省は、オレに政局を仕掛けているのか」と打ったインサイド記事を署名で書きました。 
すると、すぐに旧知の財務官僚から電話があり、「総理は本当にあんなことを言っているの?」と聞いてきたのです。 
「実はちょっとだけ見出しを変えた。本当は『財務省は』ではなく『香川は』と名指しだったけれど、そのまま書くといくら何でも可哀想でしよ』と応じると、絶句していました。
阿比留 
さすがの財務省も縮み上がった。痛快な話です(笑)。
田村 
官僚は自身の出世や将来に響くので、省庁を問わず、固有名詞か出されることを恐れます。
したがって名前を伏せたまま「○○省」がこうだ、こんな工作をしている、とメディアが叩いても、ほとんどの場合、無視する。
自分の名前が表に出ないのをいいことに政界工作を仕掛けてぃるのです。
攻略。