「制御不能な“異形の大国”」となった中国とどう付き合うか。ウイルス禍はさまざまな根本問題を突きつけていると著者は指摘する。  

2020/7/20

以下は今日の産経抄からである。 
同僚には推理小説(ミステリー)のファンが多い。
仕事柄、謎を解く魅力は忘れ難くても、現実には解けない謎が多いからだろうか。
そんな同僚から「これは本当に面白い」と薦められた。 
フィクション(小説)ではなく、現実を追及したノンフィクションだ。 
『疫病2020』(産経新聞出版)は、作家でジャーナリストの門田隆将氏が豊富な取材に基づき、新型コロナウイルス禍の謎に迫っていく。 
新型肺炎の患者を日本で初確認」のニュースが飛び込んだのは、半年前の1月だった。
その頃に遡り、著者がネット上で発信したツイートを織り交ぜ、率直な疑問や提言とともに、何が起きていたのか、謎解きを追体験できる。
発生源の中国当局による情報統制などが詳しく描かれている。
いち早く病気に気づいた医師が処分を受けた経緯など細部にわたる。
「制御不能な“異形の大国”」となった中国とどう付き合うか。
ウイルス禍はさまざまな根本問題を突きつけていると著者は指摘する。 
当初、中国からの入国禁止措置に踏み切らなかったことなど日本政府への厳しい批判もある。
オープンな議論の場として設けられた自民党議員の会議が“ガス抜き”の場だったとのエピソードも。
統治機構霞が関官僚らの問題に切り込み、「『国民の命を守る』という最大使命」が忘れ去られていると、戦後の平和ボケを問うている。 
例年なら20日から夏休みに入る学校も、授業時間不足を解消するため短縮する所が多い。
浮きたつ季節のはずが、不安の中にいる。
戦後75年の8月15日も近づき、国について考える機会も多くなる。
「自由、独立、命を踏みにじるのは誰か」。
疫病が突きつける現実から逃げず、取り組みを新たにしたい。